一級建築士試験では、製図ができるようになってくると記述をスキルアップする時期がきますよね。
今回は一級建築士設計製図試験の計画の要点、いわゆる「記述」に焦点を当てて見たいと思います。
記述は答案用紙2に書きます。
大まかに分けると4つに分かれます。
(2)構造計画
(3)設備計画
(4)環境負荷低減
それぞれについて2・3問程度のお題が出ます。
大切なのは、問題に即した形でシンプルな内容を記述することです。
余計なことを沢山書いても加点にならないようですので注意しましょう。
それでは早速やっていきます。
目次
一級建築士試験の記述問題対策(建築計画)
建築計画について工夫したことを記述します。
初めて一級建築士の製図試験を受けられる方にとってはこの建築計画が壁になることが多いようです。
いったい何を書いたらいいのか分からないという方が多いです。
ヒントは実は課題分の中にあります。
一番左上の主文の中です。
2020年の課題は「高齢者介護施設」ですから、高齢者や介護についてのキーワードが入ってくるはずです。
例えば「高齢者の安全に配慮」とか「介助のしやすさを考慮」といった言葉です。
その他にも、高齢者介護施設であることと、「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律(バリアフリー法)」に規定される特別特定建築物を計画する必要がありますから、
- 居宅サービス
- 居住施設
- バリアフリー
といった言葉も必要になってくるでしょう。
その部分を強調して自分の計画した図面を説明してあげると良いですね。
文章としてはあまり難しく考えないで、「○○に配慮して■■とした」というシンプルな言葉を意識するのが重要です。
バリアフリー法については
- 廊下の幅
- 階段
- 傾斜路・敷地内の通路
- 便所
- 駐車場
- 出入り口の幅
の数値を確認して、エスキス・製図に取り入れて間違いが無いようにしておきましょう。
一級建築士の記述問題対策(構造計画)
構造計画はほとんど暗記で何とかなってしまう設問です。
これは一級建築士として知っていなければならない知識として外せない部分ですから毎年必ずと言って良いほど同じような設問が出題されます。
「採用した構造種別と架構形式、採用した理由」
「構造の特徴と注意が必要な部分」
特有の設問として、
「免震構造の特徴やメリットとデメリット」
「免震建築物の計画をするにあたり工夫したこと」
このような感じの出題が多いです。
押さえておきたいポイントを箇条書きにします。
鉄筋コンクリート造は、引っ張りに強い鉄筋を圧縮に強いコンクリートで保護することでお互いの良いところを合わせた構造となっている。
そのため耐久性・耐火性が高い。
メリットは自重が重いため地震力が大きくなるが、剛性が高いため揺れにくいというところ。
デメリットは現場加工や人の手による作業が多いため、施工者の技術に品質が影響されやすいことや、クリープたわみやひび割れの可能性が高いことです。
たわみやひび割れの対策としてはせん断補強筋を密にすること及び柱梁接合部の断面積を大きくすることです。
架構形式については、採用する架構形式は耐力壁の指定が無ければ純ラーメン架構とします。
純ラーメン架構を採用する理由は、設計自由度が高いためフレキシブルな設計が可能であることと、将来の間取り変更のニーズに対応しやすいことです。
ただし、今回は免震建築物のため躯体に剛性が求められるため耐力壁が要求されるかもしれません。
一級建築士の記述問題対策(設備計画)
設備計画は苦手な方が多いですが、設備配管の理解をすれば意外と簡単に回答できるんじゃないでしょうか?
給排水設備の理解
給排水設備は給水方式が重要です。
今回は居宅サービス部門と居住施設部門という感じで分けられる可能性が高いです。
部門ごとに給水方式を分けて考えるほうが良いかもしれません。
考えられる給水方式は以下の2パターンです。
居宅サービス部門=ポンプ直送方式(受水槽に一度貯水してポンプで使用箇所まで給水する方式)
設備機械室面積(受水槽+ポンプ)=20平米
採用した理由は、水圧が安定していることと断水時に受水槽内の水を使用できること。
居住施設部門=水道直結増圧方式(水道管から直接繋いでポンプで増圧して使用箇所まで給水する方式)
増圧装置寸法=2m×2m
採用した理由は、水が大気に解放されないため水質汚染が起こりにくいことと停電時に水道管の圧力の有効な高さまでは給水が可能なこと。
給湯設備の理解
2020年は高齢者施設ということで高齢者が安心して生活できるようにガス漏れのないオール電化での計画が有効になってきます。
そのため居住施設には電気温水器を採用することが求められるかもしれません。
住戸毎に設備が分けられる場合は、各住戸内に500×500の電気温水器を記入してアピールすると良いでしょう。
大量のお湯を使う可能性のある居宅サービス部門ではガスのマルチ給湯器を採用することも想定。
湯量の多い浴室や厨房付近の外壁面に設置します。
万が一建物全体をオール電化にせよと要求されたら、給湯用のヒートポンプと貯湯槽を20平米の給湯設備室に設置して煙突を設けます。
お湯を循環して利用する場合はそれに加えて20平米の循環ポンプと濾過装置を給湯設備室に隣接して設けます。
1グリッド使うと思って良いです。
電気設備の理解
電気設備は居宅サービス部門と居住施設部門で分けます。
居宅サービスは地中から電線を引き込んで1階または2階の屋上に設置したキュービクルに送ります。
寸法は2m×4mです。
1階の屋上設置なら1階にEPSが必要になります。
2階の屋上設置なら1階と2階にEPSが必要です。そのときキュービクルを置く屋上の直下か近接した位置として、上下階で同じ位置に設けます。
居住施設部門は10個数に応じて高圧引き込みとなることが想定されるので、地中から1階に設けた20平米の借室電気室に引き込みます。
そのため借室電気室の上部にEPSが必要です。
空調設備の理解
空調設備は冷暖房と換気の設備です。
基本的には空冷ヒートポンプパッケージ方式とします。
操作性がよく室ごとの温度設定が容易で省エネ性もよく値段も安いので経済的だからです。
また構成がシンプルで機械室が必要なく省スペースでもあります。
室内機は天井カセット型で良いです。
換気の機能がないので、別途全熱交換機を設置します。
居宅サービス用の室外機は15台程度(1m×1m)を1階または2階の屋上にまとめて設置し、付近の下部に空調用PSを設けます。
居住施設用は各室のベランダに置きます。
天井5m以上ある無柱空間が要求されたら、空冷ヒートポンプパッケージ方式の床置きダクト接続型を採用し、室に隣接して機械室を設けます。
機械室内の室内機に室内の空気を吸い込んでDS(1m×2m)を通して天井または壁から吹き出します。
万が一単一ダクト方式が要求されたら、外部に面した20平米の空調機械室を設け屋上にヒートポンプチラーを置いてPSでつなぎ、1・2階にDS(2m×2m)を設けます。
環境負荷低減について
こちらも設備関連です。
屋上に太陽光発電パネルを設置して太陽光エネルギーを電力に置換して使用することで温室効果ガス削減に配慮します。
屋上緑化することで日射による冷暖房負荷を軽減し省エネルギーに配慮します。
LED照明機器を使用することで照明にかかる電力を抑え消費電力削減に配慮します。
以上を基本として外断熱やLow-Eガラスサッシなど各自の知識を動員しましょう。
作業領域とそれ以外の空間を分けたタスクアンビエント空調やタスクアンビエント照明についても抑えておくと良いでしょう。
机上面で必要な照度700lxはよく出てきます。
以上が、記述対策の基本です。
この記事全体を何度も読んで理解をするだけで記述が有利になると思いますよ。
以上、今回は
- 建築計画の記述
- 構造計画の記述
- 設備計画の記述
という内容でお送りしました。
2020年の課題は「高齢者介護施設」で、プランニングではバリアフリー法で規定される特別特定建築物の計画をする必要があります。
数値の基準ですが、
- 建築物移動等円滑化基準
- 建築物移動等円滑化誘導基準
のいずれにも対応できるよう、違いを確認して置ければより良いでしょう。
最後まで読んでいただきありがとうございました。